9.142019
法人税基本通達2-2-14 短期前払費用の通達の適用範囲について
「短期前払費用の通達の適用範囲」について(2019年9月14日 第78回ファルクラム租税法研究会より)
本日のファルクラムは①最高裁平成15年6月26日判決の「固定資産税における適正な時価」について及び②福岡高裁平成12年12月15日判決の「浚渫業の傭船料に係る損金性」について解説がありました。特に興味深かったのが、短期前払費用の通達の適用について争った②の福岡高裁(長崎地裁)の判例でした。
短期前払費用は法人税基本通達2-2-14により、継続的な費用のうち、支払った日から1年以内にサービスの提供を受ける前払費用はその支払った日の事業年度に税務上の費用とすることを認める規定なります。
本事案は事業年度末に支払った5,000万円の用船料(船を借りる費用)を「販売費・一般管理費」として、短期前払費用の通達を適用し、全額を支払った事業年度に費用計上した浚渫(しゅんせつ※)業を行う納税者と契約期間での按分計算によりその傭船料の一部のみを税務上の費用として更正した税務署が争った事案なります。
(※しゅんせつ【浚渫】とは、水底の土砂や岩石をさらうこと。河川の流路を拡げ、航路の水深を増し、また埋立用の土砂を採取するなど。)
平成12年1月の長崎地裁の判決では、納税者の事業から判断すると用船料は「販売費・一般管理費」ではなく「売上原価等」であると判断され、「売上原価等」については法人税法22条第3項1号において、収益と個別に対応するものだけを損金の額に算入すべきで、短期前払費用を適用した納税者の主張は退けられました。
また、短期前払費用の適用については、重要性の原則を逸脱しないよう、その支出が適用する法人の財務内容に占める割合や影響等も含めて総合的に考慮する必要があることも示されています。
短期前払費用の通達については、①期間費用と認められる費用なのか、②事業の内容や金額から重要な取引なのか、を判断し適用する必要があることについて非常に参考となる判例でした。
法人税基本通達 2-2-14 (国税庁ホームページより)
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。